心を穏やかにするアーサナ

私たちの日常生活には、物があふれ、求める前から様々な情報が押し寄せてきます。科学は日々進歩し、社会は急速に変わっていきます。

欲しいものはすぐ手に入り、世界の情勢が手に取るようにわかる、快適で便利な生活。

しかし、自分でも気付かないうちに目まぐるしい社会の変化に巻き込まれ、心は波立ち自分を見失いそうになります。

もし、心の波を静めることができれば、忙しい毎日であっても自分を見失うことはないでしょう。アーサナ(ヨーガのポーズ)は、心の波を静めるための準備として大切な役割を担っています。心を穏やかにして内側に向けていくことで「本当の自分」に目覚めるというヨーガの目的に近付くことができるのです。

 

ヨーガでは、私たちの身体の様々な活動や心の動きも、そしてこの宇宙の森羅万象を動かす根本的な力も、プラーナ(気、生命エネルギー)によって起こるとされています。

アーサナを行なうと、普段滞っている体内のプラーナが活性化され、プラーナの通り道が浄化されていきます。身体の隅々にまでプラーナが流れることで自己治癒力が高まり、病気や怪我が改善され、強くて丈夫な身体に変わっていきます。

 

そして、プラーナの大きな現れは「呼吸」です。

呼吸は、普段無意識にしているようですが、興奮すると浅く早くなり、リラックスすると深く長くなるように心の状態と深く関係しています。アーサナを行なっていくと次第に呼吸が深く長い腹式呼吸に変わっていきます。

それは、日常生活の中にも浸透していき、仕事や家庭などどのような状況においても深く長く呼吸が実現され、心の波は静まり、穏やかで落ち着いた、何事にも動じない集中力のある心へと導かれます。

 

アーサナを続けるには、地道な努力が必要かもしれませんが、誰もが自分で心身を調えることが可能です。

アーサナを行った後の解放感、心の静けさ、安らぎ ―― 人によって感じ方は様々ですが、その心地よさは実際に行った人にしか味わえないものです。

そして、それは次第に日常でも感じられるようになります。

続けていくうちに、その心地よさの奥にあるものが何なのか、ヨーガに、そして「本当の自分」に対する興味が自然に湧いてくるでしょう。